北海道厚岸地方チライカリベツ川・別寒辺牛川低地における過去3,000年間の古環境変化を明らかにするため,沖積層の掘削調査を行った.採取試料の珪藻分析結果から,本地域の湿原堆積物は,海生種により特徴づけられる珪藻種群M,おもに干潟に生息する種により特徴づけられる珪藻種群T,および淡水生種により特徴づけられる珪藻種群Fの3つの珪藻種群に区分された.さらに,
14C年代測定値を用いて掘削地点間の層準対比を行い,本地域における過去3,000年間の海進・海退サイクルを以下のように明らかにした.
(1) ステージ1(~2,600yrs BP頃まで):チライカリベツ川の最上流地域まで干潟が広がり,河口域では内湾が形成されていた.その後の海退により,この干潟は消失し泥炭地となった.
(2) ステージ2(2,600~900yrs BP頃まで):ステージ1で形成された泥炭地の上・中流域が,この時期に起きた海進により再び干潟となった.その後,海退に転じ,干潟は消えて現在の大きさと同様な湿原が現れた.
(3) ステージ3(900yrs BP頃~現在まで):ステージ1,ステージ2よりも規模の小さな海進・海退がみられた.600yrs BP頃の海進により,下流地域の泥炭地は沈水し,その後300yrs BP頃に海退に転じて現在の湿原が形成された.
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