第四紀研究
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37 巻, 1 号
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  • 沢井 祐紀, 三塩 和歌子
    1998 年 37 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北海道厚岸地方チライカリベツ川・別寒辺牛川低地における過去3,000年間の古環境変化を明らかにするため,沖積層の掘削調査を行った.採取試料の珪藻分析結果から,本地域の湿原堆積物は,海生種により特徴づけられる珪藻種群M,おもに干潟に生息する種により特徴づけられる珪藻種群T,および淡水生種により特徴づけられる珪藻種群Fの3つの珪藻種群に区分された.さらに,14C年代測定値を用いて掘削地点間の層準対比を行い,本地域における過去3,000年間の海進・海退サイクルを以下のように明らかにした.
    (1) ステージ1(~2,600yrs BP頃まで):チライカリベツ川の最上流地域まで干潟が広がり,河口域では内湾が形成されていた.その後の海退により,この干潟は消失し泥炭地となった.
    (2) ステージ2(2,600~900yrs BP頃まで):ステージ1で形成された泥炭地の上・中流域が,この時期に起きた海進により再び干潟となった.その後,海退に転じ,干潟は消えて現在の大きさと同様な湿原が現れた.
    (3) ステージ3(900yrs BP頃~現在まで):ステージ1,ステージ2よりも規模の小さな海進・海退がみられた.600yrs BP頃の海進により,下流地域の泥炭地は沈水し,その後300yrs BP頃に海退に転じて現在の湿原が形成された.
  • 鳥居 厚志, 金子 真司, 荒木 誠
    1998 年 37 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    兵庫県の兎和野,滋賀県の饗庭野,和歌山県の潮岬の3ヵ所の黒色土壌について,母材の種類と堆積状態,生成に関わる過去の植生要因を調べた.一次鉱物組成と粘土鉱物組成を調べた結果,母材としては,3断面とも全層位で火山ガラスなどのテフラ起源粒子と岩片などの基岩風化物が混在していた.また兎和野土壌では,風成塵など外来の石英も混在していた.ゆえに黒色土の土層は,風成などの堆積物としての要素が強く,下部層位から上方に向かって累積的に発達したものであると推定された.一方,どの断面でも植物珪酸体の風化指数は表層に近づくほど小さく,この点からも土壌層の累積的な発達過程が裏づけられた.植物珪酸体分析と花粉分析の結果から,いずれの断面でも草原または疎林のような植生の継続が示唆された.また,炭化植物片の含量と腐植含量は,必ずしも相関が高くなかった.
  • 紀藤 典夫, 野田 隆史, 南 俊隆
    1998 年 37 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    函館から発見されたシオフキ・ハマグリ・イボキサゴなどからなる暖流系貝化石群集の14C年代値は約2,400~2,300年前で,従来知られていた縄文海進期の年代よりも新しかった.新たに年代測定された群集を含めると,北海道南部における温暖種の産出年代は7,500年前,4,000年前,および2,400~2,300年前の3つの時期がある.この温暖種の産出年代は,対馬海流の強勢期によく一致する.温暖貝化石群集は,対馬海流の脈動に対応して分布を北海道まで拡げたが,このような事件は完新世に3回生じた可能性がある.
  • 鳥居 雅之, 福間 浩司
    1998 年 37 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    黄土層は,アジア大陸内部での過去250万年間の古環境変動を研究する絶好の対象である.とりわけ,モンスーン気候の成立と密接な関係があると考えられていること,また黄砂現象が日本や広く太平洋(北半球)にまで及んでいることなどを考えると,第四紀の古環境復元にとって黄土層研究の持つ意味は大きい.黄土層による古環境研究が進んだ大きな理由の1つとして,黄土層の初磁化率の変動が深海底堆積物の酸素同位体比変動ときわめてよく似ていることがあげられる.古気候のproxyが陸成堆積物から得られたことの意味は非常に大きい.その一方で,黄土層ではなぜ初磁化率の変動が見られるのか,とくに古土壌でなぜ初磁化率が増加するのかということが,この10年間の岩石磁気学的研究の中心的課題であった.初磁化率は,単に強磁性鉱物の含有量に比例しているのではなく,強磁性鉱物の種類ごとの粒径分布に強く支配されている.最近の研究により,土壌化作用で形成される100nm以下の単磁区~超常磁性粒子の増加が,古土壌での初磁化率増加の原因であることがはっきりしてきた.この過程が生物的なのか,それとも非生物的なのかについてはまだ議論が続いているが,いずれの場合でも気候の湿潤温暖化が古土壌での初磁化率増加の共通の原因であることは確かだろう.初磁化率増加のメカニズムがはっきりしてきたことにより,初磁化率の変動から降水量を推定し,古気候復元のための定量的モデルを構築することが可能になってきた.
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