八甲田山南山麓の溶岩台地面上に分布する黒色土と褐色森林土の土壌有機物についてδ13C(13C/12C,炭素同位体比)を分析することにより,腐植を供給した植生の推定を試みた.δ13Cの分析結果から,黒色土のδ13C値は-20~-18‰を示し,一方褐色森林土では0~5cm深で-22‰を示したのを除けば,深さ55cmまで-25~-23‰を示した.これらの結果から,この地域での黒色土の腐植は45~53%がススキMiscanthus sinensisなどのC4植物の植物遺体から成り立っていると推定され,これらの植生が約4,000年にわたって連続的に土壌中に有機物を供給していたと考えられた.また,褐色森林土にはおもにC3植物の植物遺体が供給されたことが明らかになった.