長崎湾および長崎低地の完新世の古地理および海面変化にっいて,空中写真判読,ボーリング資料,14C年代などから考察した.長崎湾および長崎低地の沖積層は,浦上川基底礫層Urg,出島粘土層Djc,松山砂礫層Mtg,人工改変堆積物Ardに区分される.Urgは,埋没谷形成時の河成堆積物で,最終氷期または完新世初期における少なくとも-30m以下の低海水準に対応したものである.Djcは,貝化石を含む粘土やシルトを主体とする内湾性堆積物で,その時代は縄文海進期から現在である.Mtgは,Djcと同時期の河成堆積物である.Ardは,現在の地表面をつくる堆積物で,1570年長崎開港以降の埋立物質や建築資材などからなる.Ardには,1945年の原爆堆積物Abdが含まれる.潮間帯の貝化石の14C年代から,海水準は約8,000yrsBPに-16m付近に,約4,000yrs BPに-0.4m付近に,約1,700~800yrs BPには現在と同じか,やや低い位置にあった.約4,000~400yrs BPまではあまり海岸線の変化はなかったが,1636年出島築造以降は,度重なる人為的埋立により海岸線は前進し,現在に至っている.