第四紀研究
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上総層群の陸棚-深海堆積物に記録された氷河性海水準変動と古海洋変動
堀川 恵司高野 壮太郎伊藤 慎中野 孝教
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2001 年 40 巻 3 号 p. 283-290

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抄録

上部鮮新統-中部更新統上総層群の古環境解析の意義と,上総層群に記録された氷河性海水準変動ならびに古海洋変動の特徴を検討した.上総層群下部は,深海底で形成された堆積物で特徴づけられる.これまでの研究で解析の対象となることの少なかった半遠洋性シルト岩に注目し,帯磁率や化学組成の特徴を検討した.その結果,低海水準期に形成された半遠洋性シルト岩は,海進期や高海水準期のそれと比べて帯磁率が高く,これに対応してTiO2,Fe2O3,MgOなどの含有量が多く,CaOの含有量が少なくなることが明らかとなった.このような変動は氷河性海水準の低下にともなって,midwater flow起源の陸源砕屑物の深海底への供給量が増加することに対応すると解釈される.次に,およそ70万年前に,黒潮の影響を強く受けて形成された上総層群上部の陸棚堆積物の岩相的特徴を検討した結果,3,000年程度の周期で黒潮の流路や流速の長周期の変動が存在した可能性が明らかとなった.このことは,中期更新世以降,1,000年オーダーの気候変動が,時間的にも空間的にも地球規模で存在していた可能性を示している.

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