脊梁山脈中央部に位置する鬼首カルデラを起源とする中期更新世テフラ層として,鬼首池月テフラ層(O-Ik:約250ka)がある.O-Ikは,火砕流堆積物を主体とする総体積18~36km3のテフラ層で,脊梁山脈東山麓側の宮城県北部丘陵地域に分布する最大規模のテフラ層として広く認められてきた.一方,脊梁山脈西山麓の向町・新庄盆地では,山屋層と呼ばれる厚い砂礫層の中および上位の層準に,火砕流堆積物が認められてきたものの,他地域のテフラとの対比がなされていなかった.本稿では,向町・新庄盆地に分布するテフラ層中の火山ガラスや斜方輝石の屈折率測定,および火山ガラスの主成分化学組成の分析から,同地域においてもO-Ikが分布することを明らかにした.この新たな知見により,新庄盆地南部に分布する舟形断層・長者原断層など構造線の活動場の変化と,それに伴う丘陵内の高度分化を時系列的に明らかにできた.さらに,脊梁山脈を挾んだ東西山麓地域での中期更新世以降の地殻変動と地形発達様式に差があることが明らかになった.