2015 年 2015 巻 1 号 p. 53-64
近年,大企業・中小企業,公開会社・非公開会社といった企業の多層化のなかで,会計基準が複線化している。よって,中小企業にとって,何が公正処理基準であるか不明確な状況となってしまっている。そこで,中小企業にとって必要な会計基準について検討する意義は大きい。
中小企業は,投資家に対する情報提供機能を重視した会計ではなく債権者や課税庁といった企業の利害関係者に対する利害調整機能を重視した会計を目指すべきであり,そこで,確定決算主義を前提とし,極力,会計基準と税法基準とを乖離させないことを目指した中小企業会計制度の構築について検討した。
多くの中小企業には,投資家向けの投資情報としての会計ではなく,以前の商法が要請していたような利害関係者のための配当可能利益の計算を中心とした会計が引き続き求められている。これまでの会計は,取得原価をベースとした会計によって果たされてきたと考えられる。このような観点からみれば,中小会計要領は,取得原価会計のあり方を集約した企業会計原則・一般原則の考え方を承継しており,この意味では,中小企業版の企業会計原則ということができ,「一般に公正妥当と認められる会計基準」に妥当するものであると考えられる。ところが,法人税法では最も基本的で重要な公正処理基準として,①資本と利益の区分,②実現主義,③費用収益対応の原則が挙げられており,中小会計要領にこの考え方が取り込まれている状態になっていることを考慮すれば,中小企業の経営力が強化されるためにも,まず一般的に計算書類が税法基準で作成されていることを鑑みて,中小会計要領を法人税法に盛り込ん だ規定を作成することが重要であると考える。