2019 年 2019 巻 5 号 p. 35-45
本稿では,中小企業経営者が自社の管理会計実践に対して抱いている認識について検討する。先行研究では,自らは管理会計を実施していないと認識していながらも自社の財務的業績の推移を確認している中小企業経営者が一定数存在していることが明らかにされている(朝原 2010)。本稿ではこれを受けて,飲食企業4 事例のケース・スタディにより,経営者が認識していないにもかかわらず管理会計が実践されている可能性を考察したい。そして,経営者自身が会計プロセスの一部分しか担っていない場合には,経営者が自社において管理会計を実践していることを認識しない場合があることを示す。そのうえで,中小企業における管理会計の実態をより正確に理解するためには,会計情報の生成・ 利用プロセスにとどまらず,企業活動の管理のための情報の生成・利用プロセスというより広範な観点からの調査が必要と考えられることを論じる。