2020 年 2020 巻 6 号 p. 14-30
本稿は,従業員数100 名程度の中小企業におけるマネジメント・コントロール・システム (Management Control System:以下,MCS)が系列企業へどのように移転が行われ,定着を進めようとしているのかをサーベイ調査とインタビュー調査を用いて明らかにするものである。これにより,MCS の移転と定着が十分に人的資源に恵まれないと考えられる中小企業においていかに果たされているのか,キーパーソンとなる人物がどのような役割を果たし,それを組織成員はどのように捉えているのかを検討する。
中小企業におけるMCS の移転・定着において,管理会計システムや目標管理制度に精通した専門的な経営者あるいは経営幹部を育成することの重要性を示唆している。具体的には,MCS(予算と目標管理制度)に基づく目標設定,業績評価の明確化と,MCS を機能させるための基礎としての丁寧なコミュニケーションをとることによって経営改革を推進してきたということである。この点については,Davila(2005)などの一連の先行研究に示されていることが日本の中小企業においても同様に当てはまることを意味している。