本研究では,自分の間違いからの学習を促す学習方略「教訓帰納」の利用に着目し,問題解決に有効な教訓の引き出しを妨げる学習者の思考のつまずきとその支援の可能性について探索的に検討した。中学2年生10名を対象に個別調査を実施し,参加者が数学の問題を解き終えてから教訓を引き出すまでに従事した思考に関する発話を収集した。分析の結果,問題解決に有効でない教訓を引き出しに関わる思考のつまずきとして,自分の解法と正解を十分に比較できていない等の3つのタイプが示唆された。さらに,参加者に対して対話的な働きかけを実施した結果,自分の誤った考え方と正しい考え方を比べた上で,自分の間違いの原因を的確に把握することが,問題解決に有効な教訓の引き出しにつながる可能性が示唆された。最後に,本研究の結果を踏まえて,問題解決後から教訓を引き出すまでの思考過程を考察した。