本研究では,中学校2年生時点での数学のスキルの習得状況が小学校6年生時点の算数学力と学習方略,中学校1年生時点の家庭の社会経済的地位と学校区によってどのように説明できるか検証した。「計算力」「概念理解」「図形操作力」「論理力」の4つのアトリビュートを設定し,説明変数を組み込んだ認知診断モデルをMCMC法によってベイズ推定した。その結果,小6時点での学力が高かった生徒はすべてのアトリビュートで習得のオッズが3~7倍程度高く,小6時点で学習方略が身についていた生徒は「計算力」と「概念理解」を習得の見込みがわずかに高かった。中1時点で就学援助を受給していた場合,「計算力」と「概念理解」で習得のオッズが3~4割程度低くなっていた。また,これらの共変量を統制しても,アトリビュート全体の習得のオッズには学校区により最大6倍程度の開きがあった。