2012 年 8 巻 1 号 p. 19-30
本研究では,高校生の英語学習を対象として,定期テストの勉強時に使用される学習方略と,定期テスト後の見直し行動を行う際に使用される学習方略の関係について検討を行った.また,これらの方略使用を規定する要因として,「テストの実施目的・役割に対する学習者の認識」であるテスト観と,テストを受けることに対して接近するか回避するかという2つの動機に着目し,これらと方略使用の関連を検討した.高校生493名を対象に質問紙調査を実施し,解析を行った結果,テスト勉強時の方略使用が見直し行動時の方略使用の規定因となっていることが示された.この結果から,テスト後の見直し行動を促進する方法として,テストを受ける前に適切なテスト勉強の方法を教授することが有効であると示唆された.また,テスト接近傾向の高い学習者ほど,適応的な学習方略を用いる傾向にあり,「テストは学習の改善に活用するためのものであり,また学習のペースメーカーとなる」というテスト観を有する学習者ほど,テスト接近傾向は高いことが示された.さらに,学習方略間の関連やテスト接近-回避傾向の影響を考慮しても,テスト観と学習方略には関連があることが示され,テスト観への介入の重要性が示唆された.