2012 年 8 巻 1 号 p. 31-48
項目反応理論(IRT)に基づく等化の方法を用いた大規模標準化テストを実施するにあたり、項目の特性(項目パラメタ)が既知の項目を本試験前に準備しておく必要があるが、十分な項目パラメタ既知の項目が用意できない場合もある。その場合、毎回の試験で、項目パラメタ既知のアンカー項目よりも多くの「項目パラメタ未知項目」を含んだ問題冊子を受験者に提示し、アンカー項目の項目バンク上での項目パラメタを手がかりに、毎回のパラメタ未知項目について過去試験に等化することを繰り返す試験デザインを考えるが、このデザインでは等化方法の検討が不十分であった。本論ではテスト実施回ごとに新規項目が追加されるテストデザインにおいて、同時推定(concurrent calibration)と個別推定(separate calibration)による等化を行うシミュレーション研究を行った。その結果、規準集団を定義するための試験(試行試験)での識別力が受験者の能力を判定するための試験(本試験)での識別力よりも小さい条件において、個別等化の結果が、項目バンク全体において、より真の値に近い項目パラメタの推定値を返すことが分かった。