2025 年 46 巻 1 号 p. 34-44
本研究の目的は、学生の危機に対する組織的対応体制に注目し、相談現場の生の声を拾い上げ、実務者が感じている問題点や課題を明らかにすることである。そのために、学生相談機関の運営責任者等7名によるフォーカス・グループを実施し、そこでの議論を質的に分析した。危機対応課題は、①基本理念と行動原則といった「共通原則の不在」、②法的・道義的責任といった「責任に関する理解の混乱」、③学生相談の役割に関する理解と部署間の役割分担といった「役割分担の不全」、④相談機関の安全対策と全学的な支援体制における「安全対策の不備」に分類されること、これらの課題は相互に影響し、危機事案、学生ニーズ、環境要因という「背景にある多様性」に影響されることが明らかになった。結果をもとに課題解決の方向性について考察し、共通原則の構築に向けて、法的視点を導入することが検討された。また、法的根拠に基づく危機対応チーム編成の可能性と、カウンセラーが判断を誤らないための備えとして、倫理的意思決定モデルの使用について議論した。