抄録
本発表はバリ島の伝統的な器楽合奏ガムランのパフォーマンスにおいて、身体の動きがいかに生み出され、またどのように知覚されているかを論じる。演奏者のガムラン合奏に携わる演奏者の身体は(1a)必要な音響を生み出す(2a)奏者間の相互作用を可能にする(3a)音響を可視化して表現する、の三つの機能をもち、各機能は(1b)個人的な技能の習得過程、(2b)他の演奏者との合奏、(3b)競技会など観客のいる演奏という演奏文脈において、顕著になる。三つの機能は連動しながら、演奏者の身体をつくりあげているが、その際に演奏者個々の身体はつねに他者に同調し、同時に他者の同調を誘うものとして形成されると考えられる。