抄録
ブータンでは、2008年の民主化以降、国内における仏教界の活動が一層活発化している。民主化後のブータンでは憲法によって仏教が「国の精神的遺産」と位置付けられる一方で、仏教僧を含む全ての宗教者から選挙権・被選挙権が剥奪され、国会において留保されてきた僧侶のための議席も廃止された。しかし、政治から切り離されることで仏教界はかえって自律的な宗教活動を活発化・多元化し、市民社会において多様な消費を喚起しつつ影響力を高めている。発表では、民主化後の村落社会における村寺の僧院化と村人による仏教との新たなつながりについて考察する。