抄録
社会の高齢化が進むなか,複合的なニーズを抱える中高年期知的障害者と高齢の親の同居家族の存在が地域課題の1つとして注目されている.中高年期を迎えた知的障害者が心身の機能低下によってケアの必要度が高まり,一方で親も加齢伴う病気・機能低下・認知症等によってケア力が低下する.親に代わって子をケアする体制が整わないなか,高齢になった親が子のケアを担いきれなくなり,親子の生活が行き詰まるケースや,地域で孤立しているケースが多数報告されている.そのような状況に対して,障害分野と高齢分野の相談援助職は,知的障害者本人と親のニーズへの対応と生活の立て直しに向けた支援を模索している.本稿ではまず,中高年知的障害者と高齢の親が経験しているさまざまな生活課題を整理し,その背景要因について考察する.次に障害分野 および高齢分野で取り組んでいる相談支援の現状と課題を明らかにしたうえで,親子に対する一体的な相談支援の必要性について考察する.