抄録
WISC-IV 知能検査を中心に,よくある誤解を 7 つ指摘し,正しい理解について述べた.7 つとはすなわち,1田中ビネー知能検査 V の IQ と WISC-IV 知能検査の FSIQ の互換性,2 WISC を実施する目的,3 WISC でわかることと,わからないこと,4検査結果のグラフに凸凹が あるとよくないのか,5指標得点が平均である 100 を超えていれば問題ないのか,6検査結果のグ ラフに凸凹がないのは,バランスのよい,よい結果なのか,7検査結果の解釈の仕方である.これ らに対し,(1)WISC を実施する目的は受検者のつまずき(主訴,問題)の原因と対策を知ること であること,(2)WISC は万能ではなく,WISC で測定できなかった領域については他検査を実施 するべきであること,(3)検査結果のグラフに凸凹がある子どもが世の中の大半であること,(4) 数値だけでは検査結果を解釈することはできず,主訴や日常の様子,検査中の行動観察等と照合す ることによって解釈が成り立つこと等について論じた.