2021 年 43 巻 3 号 p. 290-299
コロナ禍による知的障害者の雇用情勢や在宅訓練の現状を扱った.雇用情勢については, 本稿執筆時点では,コロナ禍の状況がこれまでの不況時よりも特別に雇用情勢が悪いと主張することは困難であった.ただし,職場実習や障害者合同面接会が中止となる等の影響も見受けられ,知的障害者の場合,出勤しないことには業務遂行が困難な現業職であることが多く,ICTを用いた在宅勤務ではなく自宅待機等の対応をしている場合があった.一方,知的障害のある人についての 在宅訓練については,事例で示したとおり,在宅訓練を行ううえで作業精度の低下,モチベーショ ンの維持や,生活リズムの低下や家庭関係の悪化といった課題がありつつも,工夫をしながら実施する事業所があることが把握できた.今後もコロナ禍による労働分野への影響に変化が予想されるため,引き続き雇用情勢や在宅訓練の実施状況を注視していく必要があろう.