発達障害研究
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43 巻, 3 号
新型コロナウイルス感染症の影響の現状と今後の課題─ニューノーマル時代における障害者(児)支援─
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • ニューノーマル時代における障害者(児)支援
    小澤 温
    2021 年 43 巻 3 号 p. 259-260
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
  • 大園 啓子
    2021 年 43 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルスの感染拡大により,社会は大きく変化した.感染拡大を防ぐため,発達障害医療現場においても,従来とは大きく異なる感染症対策を講じる必要性が生じた.横浜市総合リハビリテーションセンター発達精神科外来では,待合室の混在回避や診察室の消毒,換気時間 確保のために,電話診療の導入,稼働診察室数の制限等を行った.社会の急激な変化は,発達障害のある人や家族にも大きな影響を及ぼした.発達障害専門外来に通う子どもたちのなかには,これ までのルーティンを変えることにストレスを感じてイライラが強まったり,生活リズムが乱れたり して,家族の負担が増したケースもいた.一方で,一斉休校期間に,自宅で一人で過ごす時間が増 えたことにより,かえって精神的に安定したケースや,マスク着用や社会のオンライン化に適応できていたケース等,新しい生活様式(ニューノーマル)を受け入れることができているケースも多 かった.
  • 知的障害特別支援学校と高等学校の生徒自身の評価からの検討
    小島 道生, 岩切 祐司, 小笠原 志乃, 片山 忠成, 菅野 佳江, 菊池 恵美, 島 尚平, 杉田 葉子, 高木 哲也 ...
    2021 年 43 巻 3 号 p. 268-277
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,コロナ禍において対面での実施が困難となったため,オンラインでの交流お よび共同学習を実施し,その効果と限界について,生徒を対象としたアンケート調査から検討する ことにした.対象となったのは,特別支援学校に所属している知的障害のある中学生18名と高等 学校の生徒14名である.1 年間に4回実施したオンラインの交流および共同学習のうち,2 回目のオンラインの交流および共同学習のアンケート調査を分析し,効果的な支援のあり方について検討 した.その結果,知的障害のある生徒は,オンラインの交流に対して,困難さを感じる生徒と感じ ない生徒に分かれていたが,高校生は程度の差はあるもののオンライン交流に対する困難さを感じ ている生徒が多かった.そして,困難さに関する回答理由の分析から,知的障害のある生徒には活 動そのものの難易度が影響している一方で,障害のない生徒に対してはオンラインの通信にかかわる制限への対応が求められていることも示された.また,知的障害のある生徒と高校生に共通し て,オンライン交流で,相手校の生徒のことがよくわかったかどうかは,意見が分かれていたが, 過去の対面での交流および共同学習の経験の有無が影響している可能性も示唆された.
  • 福祉分野における影響と課題,必要な取組み
    清野 絵
    2021 年 43 巻 3 号 p. 278-289
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    COVID-19 の影響下において,知的障害者や発達障害者に,障害に配慮した必要な取組みを効果的に行うため,本人や家族,福祉サービスへの COVID-19 の影響や課題を明らかにし, 必要な取組みについて考_察した.その結果,障害者・児に対する福祉サービス事業所では, COVID-19 前と比較し,報酬や収入,生産活動収入,賃金・工賃の減収,稼働率や利用率の減少 が見られた.全体としてサービス提供量と収入が減少していた.また,本人では状態やメンタルヘルスの悪化が,家族ではメンタルヘルスの悪化が見られた.今後必要な取組みは,1情報アクセシ ビリティの向上・情報保障,2障害に配慮した感染対策,3必要なサービスを安定して提供するための対策,4職員の負担軽減のための対策,5メンタルヘルス対策,6家族支援,7日常生活における本人支援,8弱者への対策,9モニタリングや調査研究と考えられた.
  • 若林 功, 山口 明日香
    2021 年 43 巻 3 号 p. 290-299
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    コロナ禍による知的障害者の雇用情勢や在宅訓練の現状を扱った.雇用情勢については, 本稿執筆時点では,コロナ禍の状況がこれまでの不況時よりも特別に雇用情勢が悪いと主張することは困難であった.ただし,職場実習や障害者合同面接会が中止となる等の影響も見受けられ,知的障害者の場合,出勤しないことには業務遂行が困難な現業職であることが多く,ICTを用いた在宅勤務ではなく自宅待機等の対応をしている場合があった.一方,知的障害のある人についての 在宅訓練については,事例で示したとおり,在宅訓練を行ううえで作業精度の低下,モチベーショ ンの維持や,生活リズムの低下や家庭関係の悪化といった課題がありつつも,工夫をしながら実施する事業所があることが把握できた.今後もコロナ禍による労働分野への影響に変化が予想されるため,引き続き雇用情勢や在宅訓練の実施状況を注視していく必要があろう.
  • 障害者(児)支援にかかわる研修活動に与えた影響
    小澤 温, 芳野 友紀
    2021 年 43 巻 3 号 p. 300-302
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,日本発達障害連盟で取り組んできた研修が COVID-19 の感染拡大の影響によ り,研修をどのように変えて対応したのか,新たな対応によって研修参加者にどのような影響が生 じたのかを明らかにし,今後の研修に向けてどのようなことを考えなければいけないのかについて 考察した.具体的には,2020 年度に取り組んだ研修の知見から次の点が明らかになった.オンラ インを用いた研修は,感染の不安を大きく軽減できる安心感,職場や自宅から簡単に研修参加できる利便性,参加に係る時間・経費の節約の点などで大きな利点をもたらしたことが示された.他方, 対面開催と比べると,講師や他の参加者との「相互交流」の物足りなさが課題であることも示された.このようなオンラインの利用の利点と課題を総合的に勘案して,今後の研修を企画していくこ とが重要である.
  • 消去を組み合わせない分化強化手続きの効果の検討
    末永 統
    2021 年 43 巻 3 号 p. 303-312
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,特別支援学校に在籍する自閉症児の指示への応答行動を促進するために,機能的アセスメントに基づいて消去を組み合わせない分化強化手続きを行い,その効果について検討した.アセスメントの結果,対象児は,教員からの指示に応答しないこと(不応答)で教員の反応を得ており,問題行動の機能として注目の獲得が推定された.そこで,指示への不応答および指示への応答行動両方に対して強化しながら,さらに1回の指示の場合と複数回の指示の場合でそれぞれ生起した応答行動を促進するために,異なる好みの音声言語反応を随伴し分化強化をした.支援の結果,標的行動が増加するとともに,個別指示の提示数も漸減した.対象児の個別指示に対する応答行動全般を強化したうえで,さらにより提示数の少ない指示に対する応答行動を分化強化でき る可能性が示された.
  • 森島 康雄, 平澤 紀子
    2021 年 43 巻 3 号 p. 313-327
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,知的障害特別支援学級における子どもの意思決定支援について,教師が求める活動における選択行動の指導方法から検討することを目的とした.自発的な活動の開始や要求が見 られない2名の対象児に対して,学級の日課や学習において,個別の指導計画に即して,活動経験はあるが,現在は選択行動が自発しない4つの選択機会を設定し,活動の内容や方法に関する選択物を2つ提示し,対象児の選択に教師が応じる指導を順次行った.多層ベースラインデザインに準じて評価した結果,両対象児とも,いずれの選択機会でも指導目標とする活動で自発的に選択し, 活動を開始し,従事するようになり,活動に関する要求も観察された.教師が求める活動において 子どもの意思決定を支援するためには,指導目標とする活動のなかに選択機会を用意し,子どもが 意思を表出し,教師が実現する指導を通じて,子どもが自らの働きかけにより環境が変わるという 経験をもつことが重要であることが示唆された.あわせて,個別の指導計画を通じた子どもの意思決定を支える環境整備の必要性に言及した.
  • 日戸 由刈, 玉井 創太, 原 郁子, 武部 正明, 藤野 博
    2021 年 43 巻 3 号 p. 328-337
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    幼児期に療育センターを受診した自閉スペクトラム症(ASD)児の知的水準について, 幼児期後半から小学校期にかけて縦断的研究を行った.2 つの出生コホートから選定された対象 62 名を幼児期後半に知能検査で測定された IQ に基づき 3 つの知的水準の区分(正常知能,境界知能, 知的障害)に沿って分類し,小学校期に知能検査で再度測定された各群の知的水準と比較して,区分の変更の有無の割合および 15 ポイントを超えた IQ の変動の有無の割合を検討した.結果,各 群とも IQ の平均値に有意な変化は見られなかったが,境界知能群では小学校期に知的水準の区分が変更となった人数の割合が他群に比べて有意に高かった.また,境界知能群では 15 ポイントを 超えた IQ の変動を示す割合も高く,このことが知的水準の区分の変更割合の高さと関係している 可能性が考えられた.以上より,幼児期後半に境界知能と判定される事例のなかに,小学校期にな ると幼児期後半の判定や判断の内容が実態に合わなくなり,福祉サービスや教育形態の見直しが必要となる事例が一定数存在する実態が示された.対象数の少なさ,および IQ の測定方法として複数の知能検査を用いたことが本研究の限界である.
  • 古藤 雄大, 永井 利三郎, 森 瞳子, 田川 哲三, 船戸 正久
    2021 年 43 巻 3 号 p. 338-349
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    発達支援センターで療育を受けている自閉スペクトラム症児 93 名の症状と感覚特性の関 連を親面接式自閉スペクトラム症評定尺度(PARS-TR)と日本感覚インベントリー(JSI-R)を 用いて検討した.幼児期を対象とした PARS-TR は 0 点から 68 点で,5 点以上の場合は自閉スペ クトラム症が示唆される.JSI-R は視覚と聴覚,触覚,嗅覚,味覚,前庭感覚,固有受容覚の各領域の特異性を評価するもので,全体得点は 0 点から 588 点をとる.今回の調査における PARS-TR の現在の状況における平均得点は 25.3 点,JSI-R 総合点の平均は 144.8 点であった.対象者の 64.5 %が感覚の特異性を抱えていることが明らかとなった.また,対象児の症状と,触覚や聴覚, 視覚,前庭感覚,固有受容覚等複数の感覚領域との間に有意な相関が見られた.自閉スペクトラム 症の症状にはさまざまな感覚特性が複雑に関連しており,それぞれの症状や特徴だけでなく,背後に存在している感覚特性に配慮した支援を考えることが重要である.
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