災害情報
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Print ISSN : 1348-3609
特集 東京電力福島第一原子力発電所事故から5年―放射線災害と情報―
原子力災害報道におけるローカル局とキー局のニュースの差異
桶田 敦
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2016 年 14 巻 p. 33-40

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抄録

東京電力福島第一原発事故(以下、第一原発事故と略記)は、災害報道における取材と報道姿勢において多くの教訓を残した。本稿では、キー局であるTBSと系列のテレビユー福島(以下、TUFと略記)における「ニュース番組」の構造分析を行い、原発事故取材における「議題設定」がどうニュース番組に表象したのか検討を行った。

その結果、第一原発事故以降のおよそ1年間の、福島のローカル局TUFの夕方ニュース(スイッチ!)においては、年間を通じた原発事故関連のニュースは41.3%を占めたことがわかった。その内、被災住民の動向や被ばくリスクに関するニュースの割合が高く、年間総放送時間のそれぞれ、17.0%、19.3%となった。一方で、福島第一原発そのものや東京電力(以下、東電と略記)の動向を扱ったニュースは3.7%と低いことも明らかとなった。

それに対して、全国ニュースであるTBS「Nスタ」における第一原発事故関連のニュースは、1年間の総放送時間の16.5%で、その内、83.8%をTBSが出稿し、TUFの出稿はわずか9.5%に過ぎないことが明らかとなった。TBSは社会部を中心にした発取材チームを結成し、「東電・原子力安全保安院(以下、保安院と略記)などの大本営発表に頼らない取材を行う」方針で取材に臨み、TUFのニュース編集長は「原発のニュースがTBSに任せる。TUFとしてやることは、それ以外の県民に寄り添う取材、被災者の立場を打ち出す」と述べた。こうしたTBSとTUFの第一原発事故取材における議題設定の差異が、それぞれのニュース報道の差となって表象した、と考えられる。

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