2019 年 17 巻 2 号 p. 133-143
平成29年九州北部豪雨から1年が経過した。災害後、地域は復旧復興に向けた動きが見られる一方で、甚大な被害を受けた地域を中心に、災害リスクの認識の高まりとともに、災害対応にも変化が見られることが多い。災害の発生は、地域の災害対応にどのような変化をもたらすのか。本研究では、平成29年九州北部豪雨の1年後の調査として、その後の地域防災の変化やその後の災害対応に焦点を当てた聞き取り調査を行い、どのような変化が生じ、またそれがどのような要因により形成されたか分析を行った。
聞き取り調査の結果、災害対応の促進を図った様々な取組が開始されていた地区が確認される一方、行政の避難情報への依存の高まりや居住者の減少により地域による災害対応自体が困難となっている状況も確認された。また、これらの聞き取り調査を基に、主体・避難行動・影響要因の視点から避難対応の判断状況を分析し、そのような状況が形成されるに至った要因を確かめた。その結果、それぞれの地域の災害対応を変化させる要因として、コミュニティ内外の様々な要因が影響を与えていることを確認した。
本研究の結果から、災害の発生は地域の災害対応に大きな影響を与えており、災害発生後の地域における災害対応状況を確認することは、短期的な地域防災に対する方策のあり方に加え、今後の地域の災害文化をどのように位置づけていくかという長期的な視点で考える上でも重要と言える。