災害時、教員は児童生徒を誘導する立場にあり、教員の防災に関する知識不足や防災マニュアルの周知不徹底といった人為的要因で子どもたちの命が奪われることは絶対にあってはならない。本研究では、学校現場の防災対策事情を把握するために公立小中学校ならびに市区町村教育委員会を対象に「学校防災アンケート」を実施した。その結果、①自校の防災マニュアルに不備がないか、マニュアルが教職員全体へ周知されていないかもしれない等の懸念を抱く学校が多いこと、②教育委員会と所轄学校との相互的な働きかけ合いが不足している、といった問題が浮き彫りとなり、我々はこれらが防災マニュアルの管理・運営や防災教育に対する障壁になっていると結論付けた。学校防災マニュアルの管理・運営を持続可能で効果的なものにしていくためには、学校と他関係機関(教育委員会等)との連携強化を図り、組織間の相互的な働きかけ合いを持続させる必要がある。さらに、防災管理及び防災教育に関する研究が、学校現場や教育委員会の防災教育に十分役立たれているかどうかについても疑問がある。これらの課題解決に向けて、今後、効果的・効率的に防災マニュアルを管理・運営するシステム、ならびに組織的な教員養成、教育委員会内におけるアドバイザー的人材育成の制度構築が必須である。