本研究では、原子力施設におけるトラブル・事故・災害時における住民等の「情報不安」軽減を図るため、より適切な住民広報のあり方を検討した。
原子力施設周辺の道府県・市町村へのアンケート調査を通じて、市町村における防災行政無線などの整備は進んでいるものの、詳細な広報計画や広報文案の準備は必ずしも十分でないことが把握された。こうした現状を踏まえ、利用する広報手段、事態進展フェーズを区分し、広報実施の基本フローを整理した。また、住民等にとって必要な情報が常に一定の順序で提示できるよう広報文の「基本構造」を定め、これに従って、防災行政無線(同報無線)などを用いて行う「音声情報用」と、報道機関への報道要請などに際して利用する「詳細情報用」の2つの広報文案を作成した。さらに「音声情報用」広報文について住民等による聞き取り評価を行い、その妥当性を検証した。
今後は、防災訓練などを通じて、これら広報文案の活用とさらなる検討が必要である。また、広報内容に関する住民等への知識普及を図るとともに、その意見を反映した広報計画の策定、さらには関係機関間の役割分担も明確にした、より詳細な広報計画の確立が望まれる。