東日本大震災では、放送を通じた津波の危機を知らせるはずの情報が、住民の避難を“後押し”するものになり得なかった可能性がある。この課題を克服するため、各放送局では「避難呼びかけ手法」(キャスターコメントやアナウンスメントなど)に着目した改善策を施し、そのいくつかは、既に津波警報発表時の放送で使用されている。また、改善策への住民の受け止めについての調査や研究が、近年積み重ねられつつある。
本研究では、震災後に登場した新たな津波避難キャスターコメントに対して住民がどのように評価するのかを確かめるため、南海トラフ地震で津波襲来が想定されている和歌山市・神戸市・大阪市の住民を対象としたインターネットアンケート調査を行った。
結果として、高評価/低評価となる一定の傾向がみられた。たとえば、「今すぐ避難してください」や「今すぐ逃げてください」という簡明なフレーズが高評価となった。東日本大震災以降に導入されたものでは、「急いで逃げること!ただちに避難!」は低評価となる一方、「ためらわずに」や「命を守るために」を住民は高く評価した。
したがって、津波災害特番では高評価となったキャスターコメントを中心に据えての使用を検討すべきといえよう。一方で、低評価となった「大津波警報」などは、津波避難において必要不可欠な情報であるため、放送局は平時の番組などでその意味などを住民へ周知する活動も求められる。