本研究は多重被災、ある自然災害による被害からの回復が完了しないままに次の災害の被害を多重に体験することが、被災者にどのような影響を与えるかという点について、とくに「申し訳なさ」「情けなさ」という羞恥感情としての恥に着目し、質問紙調査を通じてその実態を明らかにしたものである。調査は、東日本大震災(2011年)および福島県沖地震(2021年・2022年)という3つの地震を受けた宮城県・福島県のうち、とくに揺れの激しかった19自治体の居住者1,000名を対象として、2022年12月下旬にインターネットを通じて実施した。調査の結果、多重被災を体験した者は597名おり、被害の累積によって生活再建が阻害され、生活の苦しさや疲労感を覚えていくことが明らかとなった。多重被災は、被災者が被害から立ち直ろうとする意欲の減退、換言すれば生活再建に対する意欲を打ち崩し、失意を与えるという点で、物的・経済的な損害以上の被害を多重被災者へと与えるのだといえる。加えて、少数ではあるが「申し訳なさ」「情けなさ」といった恥に関する言及が自由回答において見られてもいた。恥は羞恥感情であり、他者への開示は忌避されやすい感情であることを考えれば、潜在的にはより多数の多重被災者が恥を感じている可能性がある。災害の多発化によってこうした多重被災が増加していく可能性がある今後の社会で、このような被災の影響に対する支援がより重要なものとなっていくものと考えられる。