2009 年 7 巻 p. 75-83
平成16年に発生した各地での豪雨災害を契機に、土砂災害警戒情報、洪水予報指定河川や水位周知河川の指定の拡充、わかりやすい河川水位情報への名称変更など、多くの災害情報が整備され、充実化が図られてきた。
本研究では、平成19年台風第9号災害における群馬県の市町村の防災担当者を対象とした調査結果に基づき、市町村の災害対応および住民の災害情報理解といった観点から、市町村の避難誘導や住民の避難行動などの災害対応にみる土砂災害警戒情報や河川水位情報などの災害情報の活用実態および課題を整理した。その結果、土砂災害警戒情報や河川水位情報に基づき避難勧告等を発令すべきとの国の意図に対し、市町村ではそれら情報だけでは発令の判断は難しいと認識しており、これら情報に関する制度を整備した国と、その運用にあたる地方行政との認識の違いなどが明らかとなった。また、住民については、各所から多発される災害情報と市町村から発表される地域の災害情報や避難に関わる情報を、その重要度の区別なく捉えている可能性があり、結果として避難の必要性を伝えるような重要な災害情報までもが共倒れにおわってしまうことが懸念された。以上のような結果をふまえ、市町村における住民の避難誘導に際しては、災害情報のみに基づく一律の判断基準に従うことが地域の実情に適応しないというのであれば、市町村は災害情報を活用した地域独自の発令基準を検討すべきであること、また、躊躇なく発令基準に基づく発令を可能とするためには、それに関する行政と住民との認識の共有化を図るリスク・コミュニケーションが不可欠であることを指摘した。