災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
[論文]
地域協働・多メディア連携型での災害時情報集約・配信システムの一提案
臼田 裕一郎長坂 俊成朴 元浩
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2009 年 7 巻 p. 63-74

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抄録

甚大な災害発生時においては、様々な情報が錯綜したり、必要な情報が届かないことにより、関係する各主体間で状況を共有することができず、行動が遅れたり不安が増大するといった問題が生ずる。本研究では、特に市民を対象とした情報の扱いに焦点を当て、災害時における情報収集・伝達の一つの方法として、ある一つの主体や情報システムがその全てを担うのではなく、複数の情報システムやメディアを連結し、一連の工程を地域の複数主体が協働で運営する社会モデルを提案する。本提案は、(1)被災市民が平時から使い慣れた情報システムを活用した情報収集、(2)情報を整理・発信する役割としての災害情報センターの設置と災害情報コーディネータとしての地元ボランティアの参画、(3)複数の情報伝達メディアを活用したクロスメディア伝達、(4)これらの多種分散システム間を連結する汎用的な情報形式、の4点で構成される。これを神奈川県藤沢市に適用し、実証実験を行った結果、地域に定着している情報システムに投稿された情報への一定の信頼や、地元ボランティアならではの地域の状況に合わせたきめ細かな対応が見られ、その有効性が示された。また、2007年新潟県中越沖地震で市民向けの情報集約・配信を担った柏崎市のコミュニティFM局「FMピッカラ」へのインタビューにより、実際に災害を経験した立場からも提案の有効性及び実現可能性が示唆された。

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© 2009 日本災害情報学会
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