災害情報
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[論文]
爆弾低気圧の接近時における住民の危機意識醸成過程に関する研究
片田 敏孝本間 基寛
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2009 年 7 巻 p. 84-93

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抄録

平成20年3月31日から4月1日に爆弾低気圧によって大きな被害を受けた北海道根室市の住民を対象とした住民アンケート調査を実施し、爆弾低気圧の接近時における住民の危機意識の醸成過程を把握した。その結果、事前の気象情報により住民は爆弾低気圧の接近前に低気圧の動向に注視していたが、被災前日の天気予報では今回の荒天を予想していたにも関わらず、半数以上の住民はこれほどの被害を想起できていなかったことがわかった。低気圧接近前に今回ほどの荒天を想起した住民ほど、暴風対策等の対応行動を行っており、爆弾低気圧の接近過程においても住民が被害の発生を想起できるような災害情報の表現方法を考えることは重要であることが示された。

気象庁では、発達した低気圧の表現方法として「爆弾低気圧」といった特別な呼称を設けず、「急速に発達する低気圧」や「猛烈な風を伴う低気圧」という表現を用いるとしている。しかしながら、「急速に発達する低気圧」という表現は住民の危機意識を高めるのに一定の効果はあったものの、暴風や降雪に関する具体的な説明がなければ被害の発生を想起するには至らないことが示された。

住民の危機意識を効果的に高め、対応行動に繋がる災害情報とするためには、①低気圧の発達に応じて「爆弾低気圧」のような特別な呼称を用いること、②大雪や暴風等の具体的な現象について記述すること、③低気圧の発達や気象警報をレベル分けすることの有用性を指摘した。

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© 2009 日本災害情報学会
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