2010 年 8 巻 p. 55-64
災害時には、多くの住民が被害を回避し生活の基盤や情報を求めて避難所へ集まる。人口密度が過度で偏りのある都市部で災害が発生した場合、特定の避難所に多数の住民が集中し、大きな偏りが発生する恐れがある。入所不可能な避難所へ向かう人が増加すれば、避難完了に多くの時間を要することが懸念される。そこで本研究では、人口密度に偏りがある地域において、住民に距離情報を提供した場合とさらに避難所の入所率情報を提供した場合における避難所の入所人数の変化をシミュレーションにより比較分析し、偏りの少ない迅速な避難行動を促進するために住民に提供すべき情報を明らかにした。その結果、入所人数の偏りの軽減、避難完了時間の短縮に効果的な情報は、地域内の避難所の位置により異なり、地域内の避難所が互いに近い場合には距離と入所率情報を、遠い場合には情報量の少ない距離情報のみを住民に提供することが望ましいことが明らかとなった。本研究の結果は、避難所選択の方針や避難所位置などの設定条件に依存するが、住民を避難所へ素早く誘導するためには、住民に与える情報を取捨選択する必要があることが明らかとなった。