災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
[論文]
災害情報伝達と避難における社会学的アプローチに関する一考察
~鹿児島県垂水市の事例をもとに~
亀田 晃一
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2010 年 8 巻 p. 75-85

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抄録

行政組織やマス・メディアは,地域における災害情報伝達と避難に関し,情報を発すれば必然的に住民に伝わり,住民は情報を十分受容できる合理的存在であるという前提で情報を伝えてきた.しかし住民は,そのような機械的に発せられた情報を十分受け取り,活用してはおらず,日常の地域社会に存在する住民の社会的ネットワークの中で交換される情報こそが,避難行動への契機として大きく影響していると考えられる.しかし昨今の地域社会の現状をみると,住民の対面性が希薄になっており,地域の社会的ネットワーク,相互信頼の維持・構築が難しくなっている.そして,このような自治体のマニュアル化された機械的な情報の発し方と,地域住民の社会的関係の希薄化が,地域防災の機能不全を招いており,被害の拡大につながっていると考えられる.

本論文は,鹿児島県垂水市の事例研究をもとに,実効的な地域防災システムを構築するためには,災害情報伝達および避難に関して,地域住民の社会的関係を重視した社会学的視点から地域防災のあり方を見直すことが必要で,社会的ネットワークや信頼,互酬性の規範を協調的社会の特徴としたソーシャル・キャピタルの観点から地域防災を考察した.その結果,住民は,地域の社会関係にもとづく社会的判断によって災害情報を受容・活用していること.また,地域の日常の社会的結合を強化することによって,集団的避難を促す「社会的装置」の駆動が可能であることが示唆された.

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© 2010 日本災害情報学会
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