2010 年 8 巻 p. 96-104
2007年10月1日から緊急地震速報の一般提供が開始され、2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震ではテレビ・ラジオ等で緊急地震速報が伝達された。J-ALERT(全国瞬時警報システム)を介した防災行政無線による放送も、緊急地震速報の伝達手段の一つである。岩手・宮城内陸地震は、主要動の到達の前に緊急地震速報が発表された初めての地震であるとともに、J-ALERTを介して防災行政無線から緊急地震速報が放送された初めての事例でもあった。本研究では、J-ALERTにより緊急地震速報が放送された山形県東田川郡庄内町を対象として、緊急地震速報の聞き取り状況、聞き取り後の行動に関するアンケート調査を行った。調査票は町内の約800世帯に配布し、591の回答を得た(回収率73.9%)。防災行政無線放送で緊急地震速報を聞いた人は、テレビで見聞きした人の2倍以上となり、広く情報を伝えるには防災行政無線が有効であることが確認された。しかし、放送後にはテレビ・ラジオで情報収集をしようとした人が最も多く、身を守る・周囲に声をかけるなどの行動は促進されておらず、今後は望ましい行動についての周知が必要であると考えられた。