平成22年2月28日に南米チリ沖で発生した地震津波に伴って津波警報が発表された。しかし、17年ぶりに大津波警報が発表され、また太平洋沿岸全域に津波警報が発表されたにもかかわらず、住民の避難率は低調であった。そこで本稿では、この度に津波警報発表時における住民避難の実態を把握することから、今後の津波襲来時の津波避難を誘発するための社会対応策を検討した。
まずこの度の津波警報発表時に把握された課題としては、自宅が避難情報の対象であったのかどうかを把握していない住民が多く存在したこと、発表された津波予想到達時刻に津波が襲来しなかったことを理由に避難先から帰宅してしまったこと、過去の津波警報のはずれ経験がこの度の津波警報を軽視する方向に作用したこと、津波警報や避難情報以外の社会的対応が津波襲来可能性認識を低下させたことが挙げられる。
これらの結果を踏まえて、今後の津波避難促進策として、“津波警報がはずれたことを是とする態度”の形成を促すこと、“「今が緊急事態である」という社会的雰囲気を社会全体でつくりだす”ことを提案した。