社会・経済システム
Online ISSN : 2432-6550
Print ISSN : 0913-5472
社会に問題解決型形態生成をもたらすソーシャル・イノベーション
―交通系ICカード導入の事例―
廣田 俊郎
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2021 年 40 巻 p. 101-108

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抄録

 発明家による技術革新や企業家による事業革新によって創出された新たな動きが人々によって徐々に受け入れられ、ついには社会的実践のあり方が一新されることがある。その例として、宅配便サービスの創出、マクドナルドなどのファースト・フード店、SNS、交通系ICカード導入、キャッシュレス取引、スマホの登場などが挙げられる。こうしたミクロレベルでの新たな可能性の追求に端を発し、社会全般の変化というマクロレベルの変化として結実する現象をソーシャル・イノベーションと呼びたい。ただし、その起点としての発明家による技術革新や企業家による事業革新というミクロレベルでの取り組みについては、マクロレベルでの構造的問題点を反映していたり、逆にその利点を活用していたりする面がある。こうしたミクロ・マクロ・リンクに基づきつつ、人びとの新たな行為によって社会の新たな姿がもたらされることがソーシャル・イノベーションなのである。このソーシャル・イノベーションは、従来の社会システムに潜む問題点や矛盾を取り除き、システム合理性を高めるだけでなく、人々に対し、より豊かで意味のある生活世界をもたらすものでもある。こうしたソーシャル・イノベーションの生成プロセスはマーガレット・S・アーチャーによる「形態生成論アプローチ」の枠組みに基づいた理解が可能であり、交通系ICカード導入の事例を用いて明らかにできると考えられる。

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© 2021 社会・経済システム学会
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