抄録
本研究の目的は,事務用椅子を対象として,効果的で効率的な製品開発過程を構築するため,外観の類似の度合いに関する主観評価をデザイン業務従事者と非デザイン業務従事者から得,両者の視点の相違を検証することにある。実験では,モニターディスプレイに事務用回転椅子2機種1組の写真(計6機種,15組)を表示し,被験者から製品の類似度合いを5段階評価として得た。また,評価の際に参照した製品の部位を,スタイリング要素の選択から得た。結果は多次元尺度構成法により解析し,散布図から両者は同様の評価の基準をもつものの,3製品について異なる評価をしたことがわかった。両者は主に“背”に関連するスタイリング要素の“形状”を参照したが,デザイン業務従事者は非デザイン業務従事者より“材質”を考慮に入れ,後者は代わりに他のスタイリング要素を参照した。クラスター分析では異なるクラスター構成を示し,両者の事務用椅子の外観の認識に相違があることが示された。