2016 年 72 巻 12 号 p. 739-748
風雑音は一般的に非定常な雑音であり,信号の波形レベルでの相関をもとにした処理についてはあまり行われていない。本論文では2チャンネルを近接させたマイクロホンを用いて,各チャンネルで相関のある風雑音の収録を行い,相関の分析・風雑音の低減の二つの実験を行った。振幅・パワー・複素信号のそれぞれについてコヒーレンス関数により相関を分析した結果,どの項目についても125Hz以下で0.3~0.8の相関が確認された。その相関を利用して2種類の線形ビームフォーマにより風雑音の低減を行い,125Hz以下で3~10dB程度のパワーの低減が確認された。また,従来法(パワースペクトルサブトラクション)と提案法とでカートシス比を比較し,提案法は従来法に比べて音質の点で優位であることが確認された。