2017 年 73 巻 8 号 p. 499-508
音源信号分離は,その幅広い用途により長年にわたり研究されてきた。近年のプロセッサの計算能力の向上に伴い,多様な外乱にさらされる実環境下においても効果的な信号分離を実現するための研究がなされている。古典的なビームフォーミングの後段にウィナーフィルタのようなポストフィルタを適用して信号のスペクトルを操作する方式は,実用上高い効果が得られることが知られている。しかし,ポストフィルタを計算するためには,目的音と雑音のパワースペクトル密度(PSD)を観測信号から推定することが必要である。本稿では,信号源の空間的な特性を利用し,目的音と雑音のPSDを推定する方式について概説する。また,推定したPSDを利用した幾つかの実用的なアプリケーションとその概説的な実験結果を示す。