抄録
本研究では,大学生用のソーシャルサポート尺度を作成するとともに,ソーシャルサポートと精神的健康との関連について検討した。情報的サポートと情緒的サポートの2つのサポートを設定し,「学内同級生」「先輩」「大学教員」「大学職員」「両親」「学外友人」の6つのサポート提供者からのサポートに対して回答を求めた。加えて,精神的健康の測度として,RadloffのCES-Dの日本語版,および山本・松井・山成の自尊感情尺度を用いた。本研究では,2001年4月に実施した調査に回答した157名(回収率95.1%)を分析の対象とした。ソーシャルサポートは,因子分析によって得られた「情報的サポート」「情緒的サポート」の2因子によって測定された。6つのサポート提供者のうち,学内同級生,学外友人,両親の3者が他のサポート提供者よりも情報的サポート,情緒的サポートの得点が共に高かった。また,ソーシャルサポート尺度には精神的健康状態との間に有意な関連がみられ,抑うつ傾向に対しては,同級生,大学教員,大学職員からの情報的・情緒的サポートが必要とされていることが示唆された。この結果は大学における教育的サービス,あるいは教育相談といった,実際の援助サービスにも適用できると考えられる。また,自尊感情は,学外友人からの情報的サポートと有意な正の相関がある一方,情緒的サポートでは,すべての提供者からのサポートが多いほど,自尊感情が高かった。この結果は従来のソーシャルサポートに関する知見を支持するものであり,信頼性と妥当性を備えたストレッサー尺度が構成できたと考える。