学校メンタルヘルス
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中学校サッカー部員を対象とした構成的グループ・エンカウンターの効果 : 運動部活動内における成長促進的支援の実践
橋本 健煙山 千尋清水 安夫
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2009 年 11 巻 p. 55-62

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抄録

近年,中学校の運動部活動の現場では,対人関係の問題を起因とした部活動からのドロップアウトやバーンアウトなどの問題が深刻化している。そこで,本研究では,中学校サッカー部員に対して,人間関係開発を意図した予防的・開発的カウンセリングのグループ・アプローチ法の一つである構成的グループ・エンカウンター(Structured Group Encounter;SGE)を実施し,その効果の検討を行うことを目的とした。研究対象者は,東京都内にある2校の中学校に在籍する1,2年生の男子サッカー部員29名(平均年齢13.38歳,SD=0.68)であった。そのうち,A中学校サッカー部員18名(平均年齢13.44歳,SD=0.62)をトレーニング群,B中学校サッカー部員11名(平均年齢13.27歳,SD=0.79)をコントロール群とし,トレーニング群にのみ,SGEを実施した。両群に対し,心理的競技能力診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological-Competltive Ability for Athletes;DIPCA.3)(徳永・橋本,2000;徳永,2001;Tokunaga,2001)をSGE前(Pre test),SGE中(Middle test),SGE後(Post test)の計3回実施し,SGEの効果の検討を行った。群(トレーニング・コントロール)×測定時期(Pre test・Middle test・Post test)の二要因分散分析の結果,「競技意欲」においては,コントロール群のPost testの得点が,Pre testの得点と比較して有意に低減する結果が認められた。「競技意欲」の下位尺度の「闘争心」においては,コントロール群のMiddle testの得点が,Pre testと比較して,また,Post testの得点が,Pre testの得点と比較して有意に低減する結果が認められた。「作戦能力」とその下位尺度である「判断力」においては,トレーニング群のMiddle testの得点がPre testの得点と比較して有意に向上する結果が認められた。また,SGE後の自由記述式のアンケートからは,「SGEを行って仲間との信頼関係は良くなった」等,SGEの取り組みによるポジティブな人間関係の変化を示唆する内容が得られた。

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© 2009 日本学校メンタルヘルス学会
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