学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
教員養成における「実習体験」の本質的意味について : 小学校と養護施設,双方をつなぐ実習体験から
筒井 潤子
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 11 巻 p. 63-70

詳細
抄録

本論文の目的は,教員養成における実習体験の,より意味あるあり方を検討していく手がかりを見出すことを主眼に置き,その本質的な意味を明らかにすることである。今日,教師をめぐる現状は,精神疾患による休職者が一昨年で14年連続の増加傾向にあるとの報告を裏づけるように,大きな問題をはらみ深刻な様相を呈している。そのような現状を背景に,大学における教員養成において「現場での実習体験」が重要視され,さまざまに試みられている。しかしその形態,目的,意味づけもまたさまざまである。臨床心理士として教員養成に関わる筆者は,ゼミ学生を対象に,養護施設を校区内に持つ小学校での週1回,1年間の実習体験を行ってきた。その中で,2007年度前期,それに付随して小学校での実習後,施設に移動し夕食後までの時間をそこで子どもと関わるという体験が可能となった。ここでは,その経過と共にその間の学生たちの動きと生の声を取り上げる中から,実習体験における本質的な意味は何かを考察した。学生たちは,多くのことを体験し,感じ取り,語り合い,支えあい,意味づけていった。本学において行われている近隣地域の学校での実習体験との比較では,体験内容の質的,内容的な違いが見て取れた。学生の体験を踏まえ,そこから見えてきた実習体験の意味とは,(1)感情の揺さぶられと,その共有による支えられ体験(2)「生活する一人の人間」という子ども観の広がりであり,それらが,連携・協働の重要性への確信,教師としてのメンタルヘルス,子ども理解の深化に寄与するものと思われた。また,実習体験での傷つきを援助し,意味づけていく大学教員の役割の重要性も示唆された。

著者関連情報
© 2009 日本学校メンタルヘルス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top