学校メンタルヘルス
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原著論文
青年期におけるレジリエンス要因の構造性に関する研究―大学生を対象とした簡易的レジリエンス測定尺度の開発による検討―
八田 直紀清水 安夫
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2014 年 17 巻 1 号 p. 18-26

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抄録

【問題と目的】青年期におけるレジリエンスの向上を目的とした介入を行うには,個々人の持つレジリエンスについての状況を把握する必要がある。本研究では,調査者および参加者に対してフィードバックを行う際に,個々人のレジリエンスの状況をより明確に提示することを意図し,「個人内特性」および「環境的要因」の両側面から,レジリエンスをより簡易的に測定することを可能とする,多次元的な尺度の開発を目的とした。

【方法】健康・スポーツに関する授業を履修する学生616名(男性259名,女性352名,不明5名,平均年齢19.30歳,SD>=1.17)を分析対象とし,質問紙調査を集合調査法にて行った。調査内容は,「大学生版日常生活レジリエンス尺度:Resilience Inventory for Daily Life of University Students(RIDLUS)」の原案,「大学生版ライフスキル尺度:Life Skills Scale for University Students(LSSUS)」および「大学生版ポジティブ・コーピング尺度: Positive Coping Scale for University Students(PCSUS)」であった。RIDLUSの開発,およびその構造性の検討のために,探索的因子分析,信頼性係数の算出,検証的因子分析,相関分析,クラスター分析および高次因子分析を行った。

【結果】RIDLUSの原案に対する探索的因子分析の結果,5因子25項目が抽出され,各下位因子の信頼性係数は,すべて.80以上を示した。抽出された因子構造をもとに検証的因子分析を行った結果,各適合度指標は,統計学的基準値を満たした。また,相関分析の結果,開発した尺度と関連が想定されたLSSUSおよびPCSUSの各下位因子との間に,有意な相関が認められた。さらに,クラスター分析および高次因子分析の結果,2つの1次因子(「個人内資源」および「社会的資源」)を有すると仮定した尺度構造において,各適合度指標は,統計学的基準値を満たした。

【考察】分析の結果,一定水準の信頼性と構成概念妥当性および基準関連妥当性を備えた,5因子25項目(各5項目)で構成される「大学生版日常生活レジリエンス尺度(RIDLUS)」が開発された。各因子の項目数が揃えられたことにより,レーダーチャートなどを用いた視覚的なフィードバックを行うことが可能となった。また,多くの変数を用いたモデルを分析する際には,レジリエンスを「個人内資源」と「社会的資源」に大別して使用することもでき,研究上の実用性も高い尺度であると考えられた。

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© 2014 日本学校メンタルヘルス学会
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