2024 年 27 巻 2 号 p. 212-222
【問題と目的】注意欠如・多動症(ADHD)者の多くが,周囲に対してADHD特性を隠すように行動することが明らかとなっており,このような行動はADHDマスキングと呼ばれている。ADHDマスキングは,環境適応のための対処方略であり,心身の健康を守るための防御機能である一方,自身の感情や行動を過度に抑制することにつながるため,多大なエネルギーを要することが明らかとなっている。本調査では,ADHDマスキングの具体的内容,構成概念,契機,効果を明らかにすることを目的とする。またADHDマスキング評価項目プールを作成し,マスキング行動の有効性と負担感を評定することで,ADHDマスキングがADHD者自身にもたらす影響について予備的な検討を行うことを目的とする。
【方法】ADHDの診断を有する男女12名と,そのうち1名の男性の保護者の計13名を対象とした半構造化インタビューを実施した。ADHDの診断を有する男女19名を対象とした質問紙調査を行った。
【結果】ADHDマスキングの内容は,「自己への対処」と「他者への対処」に分類された。33項目のADHDマスキング評価項目プールが作成され,各項目の有効性と負担感が明らかとなった。
【考察】ADHDマスキングは,ADHD特性により生じる問題の解決に繋がっている一方で,心理的負担が高いものが存在していた。このうち「自己への対処」は,その多くが有効性を示し,環境適応のための対処方略として機能する可能性がある一方,「他者への対処」では負担感を示すものが複数認められた。今後は,より大きなサンプルを用いてADHDマスキング評価項目の妥当性,信頼性の検討,また負担感がもたらす心理的な影響を精緻に検討する必要がある。