抄録
イノベーション普及プロセスとメカニズムについて、先行研究では高い関心がもたれてきた。本研究は、組織のネットワークポジションが、イノベーション普及に与える影響の実証を目的とする。具体的な分析対象は江戸時代の藩校で、同一学問を教えている藩校同士を同じ紐帯で結ぶことにより形成された外部知識ネットワークが、新規学問の採用に与える影響を明らかにする。分析では、ネットワーク分析を実施した後、算出したネットワーク指標を用いて多変量解析を実施する。学問が藩校に採用されるプロセスを明らかにすることは、江戸時代の知識移転のプロセスと普及のメカニズムが明らかになるだけでなく、長期データによる実証に理論的貢献がある。