抄録
いくつかの産業においては、上位の補完製品が下位に隣接する多数のプラットフォーム製品(以降PF)の脆弱化やコモディティ化を誘発し、一方、上位に隣接するPF製品のドミナント化を強めるといった現象がみられる。自動車産業もそのひとつである。本稿の目的は、トヨタ社が近年推し進める車載OSのコミュニティ型プロジェクトであるAGL:Automotive Grade Linuxに着目し、PF競争戦略における階層間ネットワーク効果の偏りによるコモディティ化の対抗策として推進されるこのプロジェクトの有効性と課題について、過去の類似のコミュニティ型プロジェクトと参照しながら、実務上のインプリケーションを提起することである。