2023 年 3 巻 p. 40-52
親は, 子どもの可能性を広げようと子どもの習い事に熱心である. この傾向は世界各国に共通してみられるが, ややもすれば子どもに勝利や優越を求めるあまり, 親は子どもをコントロールしようとしてしまう. そこで親教育の一環として, 筆者らが作成した子育て絵本を通して, 親の勝利至上主義や過剰な支配的意識を弱めることを目的とした介入を行った. 支配的な子育ては, 多くの国でも問題として挙がっているため, 学歴志向が高く習い事も盛んである中国と日本, スポーツ立国でありスポーツの習い事が盛んなアメリカ, 芸術的な習い事や総合的地域スポーツが盛んであるドイツを取り上げ, 子どもの習い事に対する勝利至上主義や支配的意識の違いと絵本による価値観の変容を明らかにすることとした. その結果, 絵本により親の支配的意識は全ての国において低くなり, 勝利至上主義は中国を除く3か国で低くなり, 絵本による親教育の一定の効果が示された.