スポーツ精神医学
Online ISSN : 2436-1135
Print ISSN : 1349-4929
原著
スポーツ競技者のレジリエンスに関する研究
—大学生スポーツ競技者用心理的レジリエンス尺度の開発による検討—
上野 雄己清水 安夫
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 9 巻 p. 68-85

詳細
抄録

近年、スポーツ競技者の心理的ストレスを起因としたバーンアウトやドロップアウトが問題となっている。その予防策・解決策を検討する上で、レジリエンスの概念の応用が試みられている。レジリエンスとは、「困難で脅威的な状況にも関わらず、うまく適応する過程・能力・結果」と定義されている(Mastenら、1990)。そこで、本研究では、大学生スポーツ競技者を対象とした心理的レジリエンス尺度を開発し、基本的属性、ストレス反応との関連性を検討することを目的とした。

調査対象者は、大学の体育会運動部に所属するスポーツ競技者377名(男性188名、女性189名、平均年齢19.70歳、SD=1.20)であり、質問紙を用いた集合調査法にて実施した。調査内容は、基本的属性、大学生スポーツ競技者用心理的レジリエンス尺度(Psychological Resilience Scale for University Athletes : 以下PRSUAと略)の原案56項目、ストレス反応尺度32項目(渋倉ら、1999)であった。PRSUAを作成するに当たり、探索的因子分析、検証的因子分析、信頼性分析を行った。次に、性差、競技成績(世界大会・全国大会出場経験の有無)、レギュラー差(レギュラー群・補欠群・非レギュラー群)での比較検討するために、t検定、一要因分散分析及びBonferroni法による多重比較検定を行った。また、PRSUAが、ストレス反応に与える影響性を検討するために、ストレス反応の各下位尺度を従属変数とし、PRSUAの各下位尺度を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。

分析の結果、6因子(「部員からの心理的サポート:Social Support from Teammates (SST)」、「友人からの心理的サポート:Social Support from Friends(SSF)」、「競技的身体力:Athletic Physical Toughness(APT)」、「競技的自己理解:Athletic Self-understanding(ASU)」、「競技的意欲・挑戦:Athletic Motivation and Challenge(AMC)」、「競技的精神力:Athletic Mental Toughness(AMT)」)計24項目から構成される、信頼性と妥当性を兼ね備えたPRSUAが開発された。また、PRSUAの各下位尺度において、基本的属性(性差、競技成績、レギュラー差)による有意な差が認められた。さらに、重回帰分析の結果、PRSUAの各下位尺度が、ストレス反応の説明変数となることが確認され、PRSUAとストレス反応との間には、有意な負の標準偏回帰係数が認められた。

これらの結果から、大学生スポーツ競技者が持つレジリエンスの因子構造及びその特徴が明らかにされた。さらに、レジリエンスがストレス反応を低減させる影響性を持つ可能性が示唆された。今後は、スポーツ競技者が持つレジリエンスが、バーンアウトやドロップアウトに与えるプロセスについて検討する必要がある。

著者関連情報
© 2012 日本スポーツ精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top