システム農学
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酪農経営における物質循環の定量的な把握に関する研究
(2)リン、カリウムフロー量の推定
築城 幹典原田 靖生
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1997 年 13 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

家畜排泄物の環境への負荷の大きさを定量的に把握するためには、各畜産農家からの家畜排泄物の発生量およびそれらの利用状況に関する現状を正確に把握することが必要である。そこで本研究では、農林水産省経済局統計情報部が行っている牛乳生産費調査のデータに基づいて、酪農経営における物質循環のうち、リン(P)とカリウム(K)のフロー量を定量的に推定した。牛乳生産費調査の1985年度と1990年度の調査個票をもとに、酪農経営におけるPとKのフロー量(単位:kg/戸/年)を推定した。推定したフロー量の項目は、化学肥料中、自給および購入飼料中、牛乳中、牛体中、敷料中、ふん尿中およびきゅう肥の利用、販売、廃棄へのPとKの量である。結果は、調査農家別に推定したフロー量を、北海道と都府県について平均値で示した。酪農経営1戸当たりから1年に発生するきゅう肥中のP、K量は、北海道では1985年度が469kgP、3,775kgK、1990年度が641kgP、5,226kgKであるのに対し、都府県では1985年度が249kgP、1,596kgK、1990年度が315kgP、2,130kgKであった。化学肥料も含めた自家農耕地1ha当たりへのP、Kの推定投入量は、北海道では1985年度で50.4kgP、194kgK、1990年度で46.5kgP、196kgK、都府県では1985年度で84.6kgP、416kgK、1990年度で87.7kgP、479kgKと推定された。また、投入量と自給飼料による持ち出し量の差は、北海道では1985年度で35.1kgP、69kgK、1990年度で30.6kgP、62kgK、都府県では1985年度で54.9kgp、152kgK、1990年度で58.8kgP、230kgKと推定され、先の報告で示した窒素の場合と同様、都府県での負荷量がかなり高いことが定量的に示された。

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© 1997 システム農学会
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