システム農学
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中国の牛肉消費性向に関する事例的分析
劉 晨吉村 哲彦守屋 和幸酒井 徹朗
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2000 年 16 巻 2 号 p. 163-172

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抄録

近年、中国では、経済成長に伴う所得の増加、西洋風の食習慣の流入や食生活の多様化に伴って、牛肉の需要が急速に増大している。肉牛の飼養には大量の穀物を消費するため、牛肉生産量の増加は食糧問題という観点からみると大きな課題を抱えている。本研究では、中国における牛肉を中心とした肉類生産の現状について統計資料に基づいて調査を行うとともに、肉類に対する人々の嗜好や消費に関してアンケート調査によって明らかにした。統計資料の調査結果から、中国の牛肉の生産量とGDPは相関係数0.996という高い相関があることが示された。北京市、武漢市、赤峰市を対象としたアンケート調査の結果、人々の肉類に対する嗜好は、地域の生活、風土、文化、歴史の違いを反映して、地域によって異なっていることが示された。外国食文化の導入に関しては、首都である北京市が最も進んでいた。多くの回答者が牛肉を食べる量を今後増やしたいと答えていることから、今後も中国における牛肉の需要は増加を続けるものと思われる。しかし一方で、比較的高価な牛肉は、これらすべての地域で今もなお非日常的なものであることが示された。霜降牛肉に関する質問では、これらすべての地域で「食べたくない」とした回答が「食べたい」とした回答をやや上回った。巨大な人口を抱える中国の牛肉消費が今後も増え続ければ世界の穀物需給に及ぼす影響も非常に大きなものになるため、中国に適した肉牛生産システムの確立が必要であると考えられる。

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