抄録
北向き斜面上の農地の中には、秋~春季に直達日射が著しく遮蔽される農地が存在する。そうした農地における日陰領域の大部分が、農地に接する樹林域によって形成される事例があることを、モデルを用いた定量的解析によって明らかにした。 この解析過程では、まず、GISで作成された5mメッシュ標高値と数値地籍情報を用いて、日陰領域の分布を推定するための手法を開発した。地形によって生じる日陰については、水田一筆内の標高が均一となるように補正して推定した。また、樹林域によって生じる日陰については、数値地籍情報を用いて樹林域の水平分布をGIS 上に描き、樹林域に該当するメッシュ標高値に樹高の測定値や仮定値を加えることによって推定した。開発した手法を用いて、高知県の中山間地域に立地する花き栽培農家の農地を対象として日陰領域の面積を推定し、写真画像による測定結果と比較し、誤差が生じる理由を明らかにした。この検証を踏まえた解析結果から、解析対象とした農地では、秋や冬の太陽高度が最も高くなる時間帯には、日陰領域の大部分が農地に接する樹林域のみによって形成されていることを明らかにした。また、樹高の値を部分的に0mと仮定して日陰領域分布の推定を行うことにより、樹林域の一部を伐採した場合の日陰領域変化を予測するシミュレーションが可能になることを示した。