システム農学
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研究論文
中国長江中下流農村地域における人間生活が窒素フローに及ぼす影響 の現地調査研究
劉 晨王 勤学水落 元之楊 永輝石村 貞夫
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2007 年 23 巻 4 号 p. 305-316

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抄録

長江流域農村地域の持続管理について検討するため、人間生活(食物消費や排泄物の排出など)が窒素フローに及ぼす影響を定量的に解明した。まず、中国長江中下流にある湖南省桃源県(平原地域で、農業機械化が進展している現代化農村地域)と江西省泰和県(丘陵地域で、伝統的な農業が維持されている伝統的な農村地域)の2代表地域における日常生活調査を行い、1日1人当たりの各食物から摂取する窒素量および排泄物として環境への窒素潜在負荷量を推定した。その結果、各食物から摂取する窒素の量は、桃源県では17.0 g-N/人/日であり、泰和県では16.0 g-N/人/日であった。桃源県は総カロリーのおよそ47%が穀物類から、33%が肉類、卵類、水産類および乳類などの動物性食品から摂取されているが、泰和県は50%が穀物類から、29%が動物性食品から摂取されていることがわかった。また、桃源県と泰和県の人間の排泄物の土壌に還元される割合はそれぞれ26 %と67%であり、河川への排出割合はそれぞれ74%と33%であった。したがって、人間の排泄物の環境への潜在窒素負荷量は、桃源県では年間1人当たりおよそ1.61 kg-Nが土壌へ、4.58 kg-Nが直接河川へ、泰和県では年間1人当たりおよそ3.91 kg-Nが土壌へ、1.93 kg-Nが直接河川へ排出された結果となった。さらに、作物生産・消費の両方を取り込んだ窒素フローモデルを用いた両地域の比較によって、生活の変化が窒素フローに与える影響を検討した。その結果、経済の発展や都市化の進展により、農村地域における肉類の消費量を増加させ、作物の一次生産よりも肉類などの二次生産が重視されるようになった。また、地域内の人間の排泄物などの有機物資源の循環利用が減少し化学肥料や県外からの輸入飼料に依存するようになることが明らかとなった。

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© 2007 システム農学会
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