日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
高齢者併発感染症の在宅治療
平泉 宣
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2018 年 19 巻 2 号 p. 86-91

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抄録

 在宅療養者の併発感染症に対する初回投与抗菌薬として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても抗菌作用をもつアミカシン・ミノサイクリン併用投与(AMK+MINO)を選択して在宅治療を行いその効果を検討した。過去3年間岩手県立山田病院で訪問診療対象となった在宅療養者292名(年齢45〜105歳、平均年齢84.7歳)のうち経過中細菌感染症を併発したのは113名あり、1〜2週間の抗菌薬在宅投与の延べ回数324回で1名当りの投与回数は平均2.9回であった。在宅療養者の併発感染症は肺炎など呼吸器系感染症202回(62%)と尿路感染症105回(33%)が多く、その他胆道感染症(胆嚢・胆管炎)、皮膚疾患(蜂巣炎・膿皮症・褥瘡)や腸炎などで、呼吸器系感染症では初回投与抗菌薬(AMK+MINO)151回、変更投与抗菌薬51回の投与であった。抗菌薬変更(36例)の理由は、炎症所見改善せず(11例)、耐性菌検出(24例)、薬疹(1例)であり、耐性菌の内訳はMRSA(9例)と緑膿菌(5例)が過半数を占めた。初回投与抗菌薬(AMK+MINO)は全抗菌薬使用量の75%を占めたが、在宅治療継続の結果14ヶ月以上に及び地域で MRSA 感染症がみられなくなり、また肺炎死亡例は3%にとどまった。アミカシン・ミノサイクリン併用投与を在宅療養者併発感染症の初回治療薬として選択投与するとMRSA感染対策や重症化予防にも有用となろう。

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